バルトークの不思議な作品

全音から世界初となる「中国の不思議な役人」の組曲版ポケットスコアが出ていると知り、どんなものか見てみようと楽器屋へ。するとそこには、驚いたことに目当てのそれと並んであのニチフこと日本楽譜出版社のそれが、同じop.19として鎮座していた。しかもそれは、全音のより安いくせに倍ぐらい厚い。「もしかして全曲版?」と思ったが、どこにもそんな記述はない。これはいっちょ調べてからにしようと、この日は買わずに帰った。

ISBN978-4-86060-326-7そしてあのニチフのWebサイトを見ると、そこには「演奏会用組曲、バレエ上演用の舞台版を含めた全曲版」との説明が。これを見て「両者を含めた全曲って何じゃい?」と疑問に思った。「両者を一冊に収めたお徳用」と言うならわかるがそうではなかったし、この表現はいったい何なの? と思いあちこち調べてみたがわからずじまい(注1)。面倒くさくなり、結局こっちを翌日買ってしまった。

帰宅後まずは解説を一読するも、やはりそれに関する記述はない。それどころか編成についても記述ゼロ。更には巻末に「付録」として掲載されている謎の数ページについてもいっさい説明なし。まあこの辺はあのニチフならではと諦め、手持ちのCDをプレーヤに放り込んで追っかけ開始。そこから幾度となく迷子になりながら、メモとりとり付箋ハリハリで2時間あまり。こんなに真剣にスコア読んだの久しぶりである。

そして初めて知った。実はこの作品の「組曲版」というのは「全曲版」の

  • 真ん中へんから後ろをスッパリ切り落とし
  • 2箇所をカットして
  • 別のコーダをくっつけたもの

だったのだ。しかもそれを各々別の譜面とせず、演奏形態に応じて「~へ飛べ」とか「ここで終わり」とかの指示を欄外に書き込むことによって単一のそれとしているのである。if~else~exitである(笑)。組曲版だと役人死なないし(笑)。

なるほどこれであのニチフの「含めた」なる珍妙な言い回しも、作品番号が共通なのも理解できた。そしてどこかで見た「組曲版」という呼称が不適切である、という見解にも納得がいった。確かに欄外にはバルトーク自身による「演奏会版では~」という記述がある。胸のつかえが落ちてホッとした。

初版のコーダと判明した巻末の「付録」は、現行のそれより39小節長い。たぶん古~い全曲録音ではこれが聞ける筈(調べる気はないが)。なお「組曲版」の存在もこれも、そのあまりにキテレツな内容に起因するものだとか。まあ実際、そのト書きを見ただけでも「よくあの時代にこんなもん出したな」と改めて感心する。昨今の「中国の不思議な役人」らにも困ったもんだが ← 関係ない。

結論。確かにこれはバルトークの「中国の不思議な役人」全てを包含している。だが「組曲版」をこれで追おうとすると付箋紙が必須。その目的であれば全音のほうがいいだろう。

最後にあのニチフ殿。日本語と英語のバイリンガル仕立ては偉い。が、今やこんな立派なの作れるんだからせめて編成と、2つの版に関する説明ぐらい載せてくれ給え。そして解説の譜例に小節番号を書き添えるぐらいはし給え。バレエの歴史なんぞ要らんから。

注1:  たった今みたらWikipediaに書いてあった(涙)。