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銀幕のこちら側から

「少女」 邦画 : 2016年

ひょんな事から映画「少女」を観た。昨年公開されたというが知らなかったし、興行成績もイマイチだったらしいがコレ、結構面白かった。バラバラなピースが最後にカチッと組み合わさって「なるほど!」と頷かせるところが如何にも原作者、湊かなえならではという感じ。なお監督が女性というのを観終わってから知ったんだが、確かに男性にはない、良くも悪くも女性ならではの描写・表現というのを随所で感じた。

そしてあの「ふわふわ」な本田翼が、血だ死だ怨だの主役を演ずるとこんなに怖いのかと思った。本作、そのイッちまった顔だけでもじゅうぶん見る価値あり!

ただ、惜しむらくは主役以外のキャスティング。中でも、アンジャッシュ児嶋と稲垣吾郎の起用はないでしょう。どういう基準でこうなったのか知らんが、どちらも現実の姿がカブってしまってダメ。この辺が最近の邦画のアキレス腱なのかなとも思う。

真夜中の弥次さん喜多さん

最近の極私的幕末横浜ブームの中で、東海道とチョンマゲ姿から連想されたのが映画「真夜中の弥次さん喜多さん」。「タイガー&ドラゴン」と同時期に公開され、宮藤官九郎の名前を更にメジャーにしたアレである。だがこれを観た当時の俺は、その原作たるしりあがり寿のコミックも、またその原作(?)たる十返舎一九の「東海道中膝栗毛」も読んでいなかった。つまり、殆ど予備知識ゼロでスクリーンに向かったのである。

その時の感想はと言えば「ヒジョーに面白いが、ちとクドカン臭強すぎね?」だった。どこまでがしりあがり寿でどこからがクドカンなのか、それを知るためにもコミックの方を読んでみようかな、とも思ったが、なんだかんだでそれっきりになっていた。それを今回、遂に入手・読破したのだー!

それはマガジンハウスの「合本」の古本だが、今回は事前に「東海道中膝栗毛」がどんなもんなのか調べてから読む事にした。

と、ここでいきなりビックリ!  主役の両名がモーホってこれ、しりあがり寿の設定かと思ったら原作もそうだった。すると今でいうBLモノが江戸時代のベストセラー+ロングラン!?  ホンマかいなと思ったが、どうやら当時のこの国では男色も罪には問われなかったようだ。そして話の内容も、ほぼ全編に亘ってR15かそれ以上という凄まじさ(らしい)。いやはや、それならベストセラーも宜なるかなと。

そしてここからいよいよコミック「真夜中の弥次さん喜多さん」に突入!  …とそこから、息つく間もなく半日で読了!  うううー、これは凄い、スゴすぎる! 特に喜多さんがベルリオーズみたいになっちまうところからが圧巻。それもまた、さんざ持ち上げたところで「すぱっ!」と完。恐れ入りやしたー。

けどここで「てやんでぇべらんめぇ! お伊勢参りはどーなったんだよー!」 と思ったら、ちゃんと続きが。「弥次喜多 in Deep」だそうで。読むしかないな、これも。

追記:  そのDeepな方を読んだ。文字通り「更に深いところへ引っ張り込まれたなあ」という感じで読み始めたんだが、途中から格闘シーンが増え、でかいコマに擬音だらけで頁めくりが忙しいほど。傑作には違いないが、このテーマでこの人ならもっとコンパクトかつユーモラスに描けたんじゃないかと思った。という訳で、やはりオススメは上記合本ですかね。

岸辺の旅

PCに向かっていたら、横でムスコが録画していた映画「岸辺の旅」を見始めた。最初は作業しながら横目でチラチラ見ていたんだが、いつの間にかそっちにすっかり引き込まれ、遂には最後までガン見してしまった。

注:  以下ネタバレ含みます

お恥ずかしいことに、俺はこれが昨年公開されていた事すら知らなかった。題材と雰囲気は「異人たちとの夏」とか「おくりびと」とかとよく似ているが、それらとの違いは全篇に漂う「静けさ」か。CGとかサラウンドとか、そういうのと無縁な映画、久々に観た気がする。観終わった後は、とても爽やかな気分になれた。

ただ俺的にいちばん印象に残ったのは、主を失って風化し、朽ちるままとなった新聞屋のシーン。ああいうのって、作り話じゃなくて、そこら中にある話 …

とにかくいろいろと考えさせられた。こういうのが、俺の好きな映画。

彼が帰ってきた

お恥ずかしい事に、ドイツ産のこういう題名の小説があるというのを全く知らなかった。なもんでTVでその映画の宣伝見て「え”~、何だそりゃあ!?」と驚き、原作未読のまま観に行って来た。

注目度が高いのか、上映館が少ない短い、なせいか館内ほぼ満席。ここ暫くマイナーなのばかり観てきたので、こういう雰囲気は久しぶり。場内暗くなると、スクリーンには日本語でタイトルが。そんな、どこか昭和な雰囲気の中いよいよ上映開始。

そこから2時間後、全編観終わっての感想はといえば … 素直に面白かった! 筋立てと笑いとのバランスが良くて、話の流れに弛緩がない。あり得ない話も、このテンポでぐいぐい進められるとおかしく感じているヒマがない。それでいて最後には観る者に問題提起で締めくくりと、思ったよりもずっと「深い」作品だった。

ただ、そんな中でひとつだけちょっと気になった点が。

最初の方でキオスクの主人が本人に「油臭いな」と言っているところからもわかるように、これはヒトラーの時間軸で言えば自殺(心中)の直後だ。そして焦げた服からまだ油煙が出ている状態で現代に甦った、と見るのが正しいだろう。しかしそこに、隣で運命を共にした筈の妻エヴァ・ブラウンの姿はない。それどころか、ヒトラーはその存在すらすっかり忘れてしまっているように見える。部下の名前は随所で口にするのに(それとも俺が聞き逃したか?)。それが怪物の怪物たるところなんだろか。

ま、そこに拘るとJINみたくなっちゃうか(笑)。とにかくこれはおススメ!

Glazunov “Valse de Concert #1” Op.47

このところ久しく映画館に行ってないが、息子のススメで自宅鑑賞したヤン・シュヴァンクマイエル(Jan Švankmajer)の「Surviving Life  – Theory and Practice(2010)」にはハマった。まあこの傑作とそのぶっとんだ監督についてはまた別の機会にするとして、この中でBGMとしてしつこいぐらいに使われていたのがこの曲、グラズノフの「演奏会用ワルツ第一番」。よくぞこれを選んだなと。むかしむかしNHK-FMで何かの番組のテーマに使われていたので、聞けば「ああ、あれか」と思う人は多い筈。