真冬の夜の夢

先日、大学時代のオケ仲間数名が30年ぶりに集まった。そして昔話に花が咲く中、ひときわウケたのが2年下でフルートのY嬢(当時)と一人暮らしの俺との、或る一夜の出来事。それは ・・・

大学の4年目、季節は冬。22:00頃だったか、アパートの玄関ベルがピロピロと鳴ったので俺はドアを細く開けた。するとそこにひとりで立っていたのがY嬢。「あん? どしたの?」と聞くと「入っていいですか?」と言う。「ああいいよ、ハイ」と即座にドアを開くと、このY嬢がぷっと吹き出した。そしてその背後から笑い声と共にドヤドヤ現れたのは、同じく2年下のN以下男女数名。なんとこいつら、ここで俺がどういう反応をするか賭けてたらしい。そして人の部屋に全員で上がり込み、当たったとか外れたとかでひとしきり騒いだ後、明るくなるまでさんざ無駄話して帰って行った。とんでもないバカ共である。

そもそもあそこで主役が、棒立ちでニコニコしているようではもうその時点で失敗ではないか。こういう時は両腕を前で組みおろし、俯き加減で肩を震わせ「あの・・・」でいったん黙る。引き続き「実は・・・」と「わたし・・・」を3回ぐらい繰り返し、ジレた家主が「そんなところに立っていないで、さあおはいり」と言うまで待つ。そして室内に侵入後は奥に座り、家主が玄関に背を向けるように仕向ける。そこからは泣くなりモジモジするなりして家主を誘い込み、いよいよ釣れそうになったところへ待機部隊がビデオカメラ持って踏み込む。そして背後から「何やってんですかあ~♪」で完。俺をハメるには、最低でもこれぐらいの準備と演技が必要なのだ。わかったか > 30年前の首謀者Nとその一味。

まあそのバカ共もいまやみな立派なオッサンとババアになり、翌日仕事ある筈なのに閉店まで大騒ぎなのが微笑ましい。久々に楽しい酒飲めてシアワセでしたとさ。チャンチャン。

エアポート80のススメ

笑った。腹かかえて。なので急遽別枠で。

本当ならこの映画、人気の「Airport」シリーズ4作目にして

「コンコルド導入への環境保護団体の反対運動と翌年に控えたモスクワ五輪と米国の関係を背景に、商社の武器不正輸出に対する内部告発とそれを阻もうとする社長との戦いを描く、スリルと感動の一大巨編」

となる筈だったのだろう。それもフランスの誇る超音速旅客機コンコルドが舞台とあって、あのアラン・ドロンとシルヴィア・クリステルを担ぎ出すという国際交流ぶり。ところが何をどう間違ったのか、出来上がったそれは世界中が口あんぐりのB作となってしまった。予算が枯渇したか、それとも対ソ関係の悪化からか、或いはスタッフが全員途中で飽きたか、真相はいまだ定かでない。

しかし「そもそもこういう作品なのだ」と認識して見れば、これほど笑える映画も他にない。折角だからここではその見所を、物語の進行に従って拾ってみることにする。

1. ロシア人体操選手とアメリカ人レポーターの許されぬ愛

ただのバカップルだし。ロシア人みな英語ペラペラだし。

2. 深夜美人キャスター宅におしかける告発者

手ブラで来てすぐ殺されるし。キャスターも殺されそうになったのに警察とか来ないし。

3. 不正の証拠を握る愛人をコンコルドごと撃墜しようとする悪者

それもロケット花火みたいなやつで。しかも旋回でかわされるし。

4. 迫り来る国籍不明のファントムとデコイがわりの照明弾

超音速で窓開けて発射するし。成功するし(笑)。

5. 翌日のフライトにむけ点検・整備されるコンコルド

国際問題の筈なのに。クルーは街で酒飲んでるし。

6. 娼婦をあてがわれニコニコなジョージ・ケネディ

ドロンもまたスケベ役だし。エマニエル夫人はずっと服着たままだし。

7. 搭乗拒否されるチワワ

かわいそうだがどうでもいいし。てかそれ以前に昨日悲鳴あげてた乗客がみんな笑顔で乗ってるし。

8. 現金を体に巻いた整備員

鉄砲玉かと(笑)。落とすし(笑)。滑走路に撒くし(笑)。あっさり死ぬし(笑)。

9. 貨物室の減圧で床が抜けるコンコルド

そのままキリモミ状態で2万フィート降下してもみんな平気だし。

10. アルプスの雪原に胴体着陸

スキーで向かう救助隊(笑)。すぐ屋根に穴があくコンコルド(笑)。エマニエル夫人のケツを下から押すドロン(笑)。そして全員脱出したら即爆発で完(はぁ)。

心臓移植の件とかモスクワ行きとか、このあとどうなったのか一切説明なし。潔しと言う他ない。ジョージ・ケネディの「サノバビッチ!」が吹き替えでどう訳されたか、ご存じの方がいたら教えて欲しい。

大空港 (ニセモノ編)

「Airport」に触れた以上、避けて通れないのが「Airplane(邦題「フライング・ハイ」)」。レスリー・ニールセン逝去の時に特別番組でこれあるだろう、と期待したらどこもやらなかった(ガッカリ)。愛好家多い筈なんだが。

「もう一度じっくり観たい」という気にさせられる映画は多いが「何度観ても笑える」というのは少ない。俺の場合、ZAZ(面倒なので説明は割愛)がみなこのパターンで、中でもどれか一本をと問われればこれ。ネタバレになるから詳しくは書かないが、「Airport」シリーズのパロディとオリジナルな笑いとがひっきりなしで、とても一度見たぐらいではその全てを咀嚼しきれない。また前者については、再度原作(と言うのか?)を見ても笑えるという副次効果も。この際これもやらなきゃ片手落ちだろが > WOWOW。

まー邦画にもいい作品は数あれど、決定的に欠けているのがこのジャンル(スベったのは幾つかあったが)。それは恐らく国民性とかセンスとか以前に、パロディのネタにされるほどの大ヒット作がないからなんでしょう。今後に期待ですかねぇ。

大空港 (ホンモノ編)

1970年のアメリカ映画である。世界中でヒットし、続編が何本も作られた、いわゆるパニックもののハシリである。原題は「Airport」。直訳すればただの「空港」なのに、邦題では頭に「大」がつく。「大魔神」とかの「大」とは意味が違う、なんとも気恥ずかしい邦題である。テレサ・テンはまだデビュー前(←関係ない)。

まあそれはいいとして、これをどういう訳かWOWOWがシリーズ4本まとめてやってくれたので久々に見た。一流どころの役者をズラリと並べ、適度なスリルと適度なロマンと適度な笑いとのバランスが絶妙。娯楽映画とはこういうのを言うのだ。

なお本作では旅客機に爆弾で穴があき、2作目ではコクピットに小型機が飛び込み、3作目ではとうとう海に落ちて沈没する(あれ、最近そんなの聞いたような??)。どれも特撮はショボいし音声はモノラルだし、ストーリーは「あり得ない」の連続だしでツッコミどころ満載だが、結局最後まで観てしまうのはやはり面白いから。

尤もこの「あり得ない」感も最後は度が過ぎたか、4作目で遂に映画そのものが墜落、シリーズは終わってしまった。しかしここでファンを救ったのが、不朽の名作「Airplane」である。

以下「ニセモノ編」に続く。

上野耕路 セリオーソ

話題の「ヘルター・スケルター」を観た。今のエリカ様あっての、もしくは今のエリカ様のために作られたような映画だ。俺は原作を読んでいないが、充分に楽しめた。

さてこの映画の最初の方で気になったのが、モデルとして売れまくっているエリカ様 ・・・ もとい、りりこ様の写真撮影の様子を短いシーンの連続で見せる部分のBGM。

「何だこりゃ?  ショスタコの8番??」

微妙にメロディが異なり編成も違うが、リズムと展開がそのまんま。「ウデのいいアンサンブルが聞き覚えで演りました」という感じだ。パクリと呼ぶにはあまりにあからさまなこの部分に最初は戸惑ったが、その映像との絶妙なマッチングが意外にイイ。その後同じくショスタコのVn協がこれまた「化けて」出たが、これまたgood。まるで期待していなかっただけに、この時点で「ふむふむ、やるな」と感心。なのでこのあと第九や「美しく青きドナウ」がモロで来た時は拍子抜け。あの辺も同じ手法でやってくれれば良かったのに。

気になったので帰宅後に調べてみたところ、問題のそれは上野耕路という人の「セリオーソ」と言う曲だそうで、サウンドトラックにも収録されている。そのスジ(どのスジ?)では有名な方らしいが、俺は知らなかった。面白そうなのでこのサントラを購入してみようかと思っている。

あのエリカ様の映画が、思わぬところで気になる一作となりましたなこれは。

山本直純フォーエヴァー ~ 歴史的パロディー・コンサート

なんでも先の日フィル定期で、何十年ぶりかに山本直純の若い頃のを演って大受けだったとか。聴きたかったー! ここは再演を楽しみに待つしかないか。

ウチら世代で直純さんと言えば森永エール、風と雲と虹と、小沢昭一的こころ、あたりか。そういや俺の婆さん(故人・明治の生まれ)はどっかのバラエティ番組みたいなの(あまりに古過ぎて思い出せない)に毎週出ていた直純さんを「この人は面白いねえ」とか言いながら見てた。

でも俺的にはやはり「オーケストラがやってきた」のMCがイチバン。自らタクトをとった時の真剣な目が好きだった。突然の訃報からもうずいぶん経つが、生前の元気な姿を偲ぼうと買ったのがこれ。直純さんの面目躍如たる怪演(笑)揃いで、オケもノッてる。

しかーし!  何より驚いたのは「ラデッキー行進曲」4小節目裏の大太鼓一発を始めたのが、他ならぬ直純さんだったという事実。客にウケるとなれば作曲家の意図せぬ音まで平気で出してしまうというその姿勢、ストコフスキーみたいで俺は好きだ。

その後立派なホールは増えたし、海外で活躍する名手もたくさん出たこの国。なれどこういう根っからのショウマン、鬼才はもう現れないんだろか。

補筆:パロディの材料にされた曲の中には「ラプソディ・イン・ブルー」や「ペトルーシカ」といった20世紀モノも幾つか登場する一方、マーラーとかラヴェルとか、はたまたラフマニノフとかが出てこない。60年代の日本では、まだ一般的でなかったのかも。

サウダーヂ

息子が「ゼッタイみとけ」と言うので(ハハハ)観てきた。ポルトガル語で「郷愁」を意味するタイトルぐらいは知っていたが、それ以上の予備知識ゼロで。

久々にこういうのを観たなという印象。俺は長野県出身なのであの山梨付近訛りは聞き慣れているし、郷里もよく似た雰囲気なのでなんとも見ていてイタかった。そして終盤、真っ暗な商店街で賑やかだった頃の様子がフラッシュバックするとこなんぞ涙出そうになった。

しかし尺が長くて(3時間超!)最後の方ではケツが痛くなった、と言ったら「あれも狙い」と息子。なるほどね。見る側の「まだこれが続くんかい」という疲労感と、スクリーンの中のあの閉塞感とがそこでシンクロするのだ。これがDVDとかだったら途中でリタイヤか、早送りのナナメ鑑賞となってたかも。シネコンにかからないというのも頷けた。

逃げたくても逃げられない奴とか、逃げてまた戻って来た奴とか、逃げる前に捕まっちまった奴とかとかとか。その辺にいくらでもいる。あれ、俺も? そんな事を思ったらますます心がイタくなった。こういう映画に点数はつけない。

高尾山トリックアート美術館

オフクロが遊びに来たので、どこか珍しいとこへ連れてってやろうかと思ったが生憎の雨。美術館とか博物館のタグイはあまり近くにないし、どうすべえと考えていてふと思い出したのがここ。息子の賛同も得られたので3人で行くことにした。

結論から申しましょう。ここ面白いわ! 館内は様々なトリックアートが目白押しだが、中でもオススメは「揺れる街並」。前にTVで見た時にはさほど感じなかったが、ホンモノを見ると思わず「ええー!?」と声が出る。騙されたと思って、騙されに行ってみては如何?

なお最寄り駅が「高尾山口」というぐらいなもので、近くにファミレスとかコンビニとかがない。オープンカフェも飲み物しかないのでご注意を。

Tirez sur le pianiste de faux!