Cydalise et le Chèvre-pied

Gabriel Pierné (1863 – 1937)

バレエ「シダリーズと牧羊神」

ガブリエル・ピエルネのバレエ「シダリーズと牧羊神(Cydalise et le Chèvre-pied – 1923)」より、作曲者自身が編纂した組曲。この版のピアノ譜というのはなさそうなので、全曲版のそれから組曲で使われた部分を抜粋して作ってみた。

バレエのあらすじは「舞姫シダリーズと、その気を引こうとする見習い牧羊神スティラクスとのドタバタ」という、他愛のないもの。「牧羊神育成のために学校があり、パンの笛の練習がある」という設定が笑える。

第1組曲 (全11曲)

1.  牧羊神の学校

ccp16

「小牧神の入場」の名で知られる、いちばん有名な部分。左手の単調なリズムと、右手の曖昧な旋律との対比がなんとも絶妙。

2.  パンの笛のレッスン

スティラクスが教師を完璧にナメている様子が可笑しい。

3.  生徒たちの行進
4.  舞踏のレッスン(ヒポリディア旋法にもとづく)

ccp32

この「ヒポリディア旋法」とは教会旋法のひとつ。幾つか定義があるらしいが、ここではヘ長調なのにBにナチュラルがついてハ長調に聞こえる効果。

5.  サルタン妃のバレエ(入場)

このサルタン妃というのはインドから来た客人(らしい)で、体調を崩しヴェルサイユ宮殿内で病床に伏せるという強引な展開。その治療だか見舞いだかに怪しいのが次々現れる、というのがここから。

6.   サルタン妃のバレエ(黙劇)
7.   サルタン妃のバレエ(薬剤師の踊り)
8.   サルタン妃のバレエ(女奴隷たちの踊り)
9.   サルタン妃のバレエ(シダリーズのヴァリエーション)
10.   サルタン妃のバレエ(終曲)
11.   スティラクスの踊り(第2幕の終曲)

ccp142

この曲の終わりから10小節前、6/8に拍子が変わったところに「RIDEAU」なる表記がある。最初何のことかわからず、楽想用語にもないので仏語辞典でひいてわかった。これは「カーテン」の意、要は緞帳だ。ここから幕がするすると降りてきて、同時に客席からの拍手が始まりそしてクレシェンド。フェルマータが切れたところで場内割れんばかりの拍手! と、こういう展開が目に見えるようで楽しかった。

# 次はこれが第2組曲の冒頭、反対のパターンでまた出てくる

第2組曲 (全5曲)

1. シダリーズの登場

2-1

「シダリーズ、ついに現る」という感じなこの部分、拍子が左手が6/8で右手が10/16。最初譜面見た時は「ナンジャコリャ!?」と思ったが、もしかするとこの東洋風五音音階を強調したかったのかも。

2. 侍女たちと黒人小姓の登場

「侍女」とは身分の高い人の世話をする女のこと。「じじょ」と読む。小姓とは雑用係で「こしょう」と読む。要はシダリーズに迫ろうとするスティラクスの前に立ちはだかる邪魔者らの意、でしょう。たぶん。

3. 愛の手紙の踊り

2-3

ここへ来て一転、胸キュンな雰囲気に。そよ風にあおられ水面に紅葉の葉がはらはらと落ちていくところの様な、日本風な響き。もしかすると、パリ万博以来の日本ブームにあやかったのかも。

4. スティラクスの登場と舞踏

遂にラスボス、もといシダリーズの元に辿り着いたスティラクス。いわゆる「愛の場面」なんだろうが、如何にもオトナと子供のそれ。

5. 終曲

さあいよいよ! という絶妙なタイミングで、森の方からニンフらの声が聞こえてくる。我にかえったスティラクスはシダリーズの残り香を感じつつ、森に帰って行く。

この別れ際のスッタモンダ部分、全曲では合唱が加わって暫くオペラみたいな雰囲気になるが、組曲ではそこをサクッと割愛、呆気なく終わる。

Tirez sur le pianiste de faux!