レディ・マエストロ

たまたまEPGで「レディ・マエストロ(原題 ‘De Dirigent‘)」というオランダ映画が目に止まり、どんなもんかと録画しておいた。結論からいうとこれがまあ実に面白く、そして深かった。そのあらすじを一行にすれば

「今から100年も前にオーケストラの指揮者を志した女性がニューヨークで成功を収めるところまで」

なサクセスストーリー。観ているうちに、主人公と一緒に当時の社会観・倫理観にイラつくこと請け合い。また後半には「ええっ!?」と驚きな展開あり(注1)で、クラオタ以外にもイチオシである。

なお俺もこのアントニア・ブリコなる女性の名はこの映画で初めて知ったぐらいなもので、終盤に向けてのその活躍が「いっときの徒花」なのに途中で気づいてしまっていた。敢えてこの長尺をハッピーエンドで〆なかった、そこには恐らく「世界は真のレディ・マエストロの降誕を待ち望んでいる」という制作陣のメッセージが込められているんだと思う。

未見の方は是非ともご覧を。

注1: ネタバレになるのでこれから観ようと思っている方は事前調査を避けた方が吉

グラズノフの「秋」

WOWOWで今回はマリインスキー・バレエ団によるグラズノフ「四季」。指揮は苦手なゲルギエフ。

いつだったかこの曲を初めてFMで聞いた時、その終曲が「ラジオで夜中になると盛大に混信してくるモスクワ放送」のアレなのに気づいた。演奏はあの頃西側に出稼ぎにきたデビューしたばかりのスヴェトラーノフとフィルハーモニア管、けっこう話題になった盤である。そこで翌日大学の図書館で調べてみて、驚いたのはその終曲が「秋」なこと。ヴィヴァルディも日本も「四季」といえば春に始まり冬で終わるもんだが、ロシアのそれは冬から秋!? まあ「収穫の秋」というぐらいだし、交響楽的な起承転結に倣えばこの方が合ってるような気もしたが「ま、どうでもいいか」で当時はそこまで。

そんな事を思い出しつつ初めて観たバレエ「四季」。なんだが、曲を知っているばかりにその「自己醸造的イメージ」と舞台との差異というか乖離というか、そればかりが気になってしまった。てかその舞台からは、3曲めの夏で衣装が水着(当時の観客はここで興奮したんでしょうが)なところ以外「四季」ってのをまるで感じられない。そもそもバレエでロシアの「四季」をテーマにした理由は何なの? とグラズノフに作曲を依頼したプティパに問いただしたくなってくる。

がその一方で、やはりこの曲の醸し出す強烈な「19世紀的ロシア臭」は魅力的だ。マリインスキー・バレエ団には悪いがこれはグラズノフを聴く作品であって、いまや舞台はオマケなのかも。ラフマニノフが異常なほどに人気なこの国、いつかグラズノフにもその「秋」が訪れる可能性は高いとみた。