哀しい夢

あれはたぶん小学校の低学年、春休み中のことだったと思う。家族4人で新宿へ向かうべく乗り込んだ上り列車は乗車率100%で、通路に立つしかなかった。するとほどなく、すぐそこの席に座っていたお姉さまが「はい、こっちおいで」と手招きしつつお尻を浮かせ、窓際のこれまたお姉さまとの間に妹を座らせてくれた。そして同じ手順で、俺も反対側の席に座ることができた。そのお姉さまらからはその後、氏名年齢家族構成目的地将来なりたい職業その他をひととおり聞かれた後、チョコを貰ったりババ抜きしたりですっかり打ち解け、気がつきゃ新宿に着いていた。

そこで「じゃあまたね」とこのお姉さま達が一斉に席を立った時、初めて気づいた。周囲はみな東京へ登山に行くような格好の人ばかり。そして網棚から下ろした荷物が「ヘルメットと角材の束」。あの人達がどこへ向かっているのかが、ここでわかった。だがあの優しかったお姉さま達と、TVのニュースで機動隊に向かって火炎ビンを投げている連中が「同じ」とはとても思えなかったし、なにより「もっと一緒にいたかった」気持ちをこんな風に断ち切られてしまった寂しさが募った …

が、そこはしょせん小学生。すぐにそんなのスコーンと忘れてTokyo見物に夢中になってました。チャンチャン!

以後すっかり忘れていたそんな記憶が蘇ったのは、その数年後の「あさま山荘事件」とそれに続くリンチ殺人報道で日本中が大騒ぎだった時。「発見されました」で氏名と享年とともに次々出てくる写真が、どれもみなあのお姉さまらに見え、怖くて仕方なかった。だが以後こういう運動・活動は潮が引くように衰退、それと共に自分の中であの記憶もふたたび忘却の彼方に埋もれていった。

ところがなぜか最近、たまにあの時の光景が夢に出る。それは「容姿は小学生なのに中身は還暦過ぎのオッサン」たる自分が新宿駅で大学生らを涙目で見送るという、不自然極まりない夢。それもホームにひとり取り残され、どこへ行ったら良いのかわからず途方に暮れるという、救いのない夢。

ただ単に疲れてるんだろうか? それとも???